紙の教会

2011年2月22日、ニュージーランドのカンタベリー地方でM6.1の地震が発生しました。この地震によって半壊してしまったクライストチャーチ大聖堂。その代わりとなる仮設の大聖堂は、世界各国の被災地で仮設住宅などを建設してきた日本人建築家である坂茂氏によって手掛けられました。この仮設大聖堂はクライストチャーチの新たな観光名所となり世界中から多くの人が訪れています。

坂茂さんは日本人として初めて「マザー・テレサ社会正義賞」受賞します。
受賞理由は、“人類への貢献”です。

【以下 NHKワールドウォッチングより

坂さんが人道支援に関わるきっかけとなったのが、1994年のルワンダの内戦です。
寒さに震える難民の写真に衝撃を受け、国連に緊急シェルターの開発を提案しました。そして、その翌年の1月、日本で阪神淡路大震災が発生。坂さんはすぐさま被災現場に向かい、被災者の支援に乗り出しました。そこで、建築家とは何か、改めて考えさせられたといいます。

坂茂さん
「それはもうショックな光景ですよね。
しかも一所懸命造った住宅や建物が、もう焼けたり倒れたりして焼け野原になっている姿というのは、もうほんとに戦争中の爆撃の写真しか見たことのないものが目の前にあったときはショックでした。
自然災害といっても、地震自体で人はけがをしたり亡くなったりしないんですよね。
なぜ人が死ぬかといったら、建築が崩れて人が死ぬわけで、それは僕ら建築家の責任であるわけですけど、でも地震の後、建築家は普通何もしてないんですよ。
町が復興する前に、難民キャンプもそうですけど、避難所とか仮設住宅も決して生活環境が十分ではなく、非常に悪いわけですよ。
ですから、住環境を改善するのが僕らの仕事であれば、それが避難所であれ仮設住宅であれ、自分たちが何か改善する余地があるんだろうと思って入ったんです。」

被災現場で仮設住宅を建設しようと考えた坂さん。
その際に建築資材として使ったのは再生紙が筒状になった「紙管」と呼ばれるものです。

紙管は他の資材に比べて安いため、仮設住宅1軒にかかった費用は25万円。
また、軽いため、広さ16平方メートルの建物をわずか数時間で建てることができました。
さらには300人以上のボランティアを集め、「紙の教会」と呼ばれる仮設の集会所を震災発生から8か月で完成させました。

ここクライストチャーチの仮大聖堂もこの紙管が使われています。

 

クライストチャーチ市内にこんな立派な仮聖堂があることを、ニュースで見るまで知りませんでした。友人に「こんな素敵な聖堂があるんやけど行った?」と聞くと皆、「行ったことない」と。。。きっとスカイツリーや東京タワーと一緒で、あることは知ってるけど、近くにあると案外行かなかったりするものなんでしょう。絶対見たい!と思い、帰国直前に車で行ってみました。

 

 

聖堂の中は、ステンドグラスから夕方の穏やかな光が差し込み神聖な空間が作られていました。建物の外側に半透明な素材が使われているため、その部分からも光が届き優しい光で満たされています。21時までにリーフトンに到着しなくてはならなかったため、ゆっくりと内部を見学出来なかったのが残念でした。

聖堂の裏にある駐車場隣には、めっちゃ沢山の白い椅子が並べてありました。「明日、なんかイベントでもあんのかな?」と思いましたが違うのです。この185脚はすべて形います。2011年の地震で亡くなられた185名の方を追悼しているもので、学校や台所の椅子、中には車いすやベビーカーなどもあるんです。地震によっていかに多くの命が奪われたのかがわかります。

地震から7年が過ぎました。同じ年に起きた東北の震災に比べ、明らかに見た目復興の速度が遅いと感じます。中心部にはまだ、いたるとこに空き地があり、以前は人が住んでいた海岸に付近でも、地盤が緩い場所は草むらになっています。